過敏性腸症候群の原因と症状・治療・対策
下痢の原因のひとつに過敏性腸症候群があります。繰り返し下痢や便秘などの便通異常が起きてしまう困った病気ですが、どのような原因があるのでしょうか。また、治療や対策は何ができるのでしょうか。過敏性腸症候群について紹介します。
下痢を起こしがちな人の背景にある要因のひとつに、「過敏性腸症候群」があります。「IBS」とも呼ばれ、ストレスを感じやすい人の下痢の原因として、最近知られるようになってきました。
この記事では、過敏性腸症候群とはどのような病気なのか、また、何が原因でどのように治療するのか、などについて詳しく紹介します。
過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群は、腸に腫瘍や炎症といった異常がないのに、腹痛などの腹部不快感や便秘、下痢が数ヶ月以上続く病気です。10%前後の人がかかっていると言われ、女性に多く年齢とともに有病率は低下していく傾向があります。
症状の出方によって、下痢型や便秘型、混合型などに分類されていて、下痢型は、突発する腹痛や、緊張時に腹痛と下痢が同時に起こるなどの症状があらわれますが、排便でおさまります[1]。
過敏性腸症候群での下痢はなぜ起きるか
腸は、脳がストレスを感じたときや、食べたものの刺激が強いときなどに収縮運動が激しくなります。収縮運動が激しくなると、腹痛を感じたり、食べたものが消化されないまま排出されて、下痢が起きたりしてしまいます。過敏性腸症候群の人の腸は、ストレスによる刺激や食べたものによる刺激に敏感なっているため、緊張や不安に襲われたときや、食事の後などに症状が引き起こされます。
過敏性腸症候群の原因は詳しくはわかっていませんが、細菌やウイルスが原因となる感染性胃腸炎にかかった後に、過敏性腸症候群にかかるリスクが高くなることが知られています。その原因は、腸の粘膜が弱くなったり、腸内細菌が変化したりして刺激に敏感になるためと考えられています。
過敏性腸症候群の下痢の治療・対策
まずは、食生活と生活習慣の改善を行ってから、症状の改善がない場合に薬での治療を行います。
生活習慣を改善する
- 3食を決まった時間に食べるなどの規則正しい食事習慣を送る
- 暴飲暴食や夜間の大食を避ける
- 下痢の原因となりそうな食べ物を減らす(コーヒー、アルコール、香辛料、冷たいもの、脂っこいものなど)
- 睡眠や休息を十分にとる
- ストレスを解消する(適度な運動もよい)
薬物療法
生活習慣の改善だけでは症状が改善しない場合に、薬物療法を行います。腸の運動や腸内細菌、便の水分バランスを整える薬物などを使用します。あとは便秘型、下痢型など症状に合わせた薬を使用して治療していきます。それでも十分な改善が見られない場合に、下痢止め、漢方薬、抗アレルギー薬など様々な薬を組み合わせて、その人に合った治療を4〜8週間行います。専門医の診断と治療が必要です。
下痢の原因は、過敏性腸症候群の他にも様々なものがあります。詳しくは『下痢が起こるメカニズムや原因・治療・予防』で紹介しているので、あわせてご覧ください。
参考文献
- [1]日本消化器学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS) 南江堂 2014;