旅行前に準備すること
2018.03.26

海外で下痢になる原因と予防・対策

旅行は楽しいものですが、体調を崩してしまうとせっかくの観光も台無しになってしまいます。海外旅行で特に起きやすい病気として「旅行者下痢症」があります。旅行者下痢症について原因や予防、対策をドクター監修の記事で紹介します。

観光や買い物をしようとして旅行している間に、体調を崩してしまうとせっかくの楽しみも台無しになってしまいますよね。特に海外旅行中は日本と違い、使い慣れた市販薬やかかりつけの病院も無く、どうすれば良いかわからず不安になるでしょう。

旅行者が最もかかりやすい病気は「下痢」であることをご存知でしょうか。「旅行者下痢症」という専門用語もあるくらい、下痢は旅行中の体調不良としてお馴染みのものなのです。

この記事では、旅行者下痢症は何が原因で起こるのか、予防や対策は何ができるかなどについて解説します。旅行前の準備ガイド、旅行中の下痢対策として役立ててください。

海外旅行中に起きやすい「旅行者下痢症」

「旅行者下痢症」の明確な定義はありませんが、旅行中または帰国後の数日以内に数回以上の下痢と、消化器の症状(吐き気や嘔吐、血便など)が現れることとされています[1]。毎年、海外旅行者全体の20~50%となる約1,000万人が発症するという報告があります。感染リスクは旅行する地域によって大きく変わり、人気が高いアジア圏(発展途上国)やラテンアメリカ、アフリカ、中東が高リスク地域とされています[2]。

海外旅行中に起こる下痢の原因

旅行者下痢症の原因は、感染症のほかに、水や調味料など様々なものがあります。多くの場合は衛生環境によるものですが、先進国だからといって安心はできません。

感染症

細菌感染が、旅行者下痢症の最も大きな原因です[2]。有害な微生物で汚染された食品や生水を用いてつくられた料理や、加熱が不十分の料理、不衛生なトイレなどから感染します。主な病原体は下記の通りです。

  • 細菌:コレラ、赤痢、腸チフス、大腸菌、カンピロバクター
  • ウイルス:ノロウイルス、ロタウイルス
  • 寄生虫:赤痢アメーバ、回虫

清潔な飲用水でも、水質により下痢を起こすことがあります。欧米では「硬水」という、カルシウムやマグネシウムなどミネラル含有量の多い水が使われています。マグネシウムが腸管内に入ると、腸管外から水が引き寄せられます。その結果、水分を多く含んだ便が出てしまいます。

食べ物の調味料

食べ慣れていない現地の料理によって下痢を起こすことがあります。油分や香辛料は腸を刺激して蠕動運動(腸が食べ物を送り出す動き)を早めます。腸は消化物をとどめて水分を吸収する働きがあるため、蠕動運動が亢進されて消化物の通過速度が早くなり過ぎると、水分吸収が追いつかず水っぽい便になります。

環境の変化によるストレス

海外旅行で味わう非日常的な環境は、楽しい一方、身体にとっては過度なストレスとなります。心臓が血液を循環させる、胃腸が消化活動を行うなど、人間の意識と関係ない運動は「自律神経」という神経によって支配されていますが、ストレス状態が続くと自律神経のバランスが乱れてしまうことがあります。その結果、胃腸の機能が低下して下痢を起こしてしまうのです。ストレスによる胃腸への影響では、下痢でなく便秘になることもあります。

海外旅行中に起こる下痢の予防・対策

旅行者下痢症への対策として、下痢を起こさないための方法と、下痢が起きてしまったときにできるだけ早く回復する方法を紹介します。

下痢の原因となる行動を予防する

旅行者下痢症の対策は、衛生環境に気をつけることが最も有効です。下記のようなポイントに気をつけましょう。

  • 食事の前には手洗いを欠かさない
  • 手を洗えないところではアルコールジェルなどを持参して利用する
  • 屋台で売られている食べ物を安易に食べない
  • 生で提供される肉や魚介類を避ける
  • 飲料水はペットボトル入りのミネラルウォーターを選ぶ
  • 現地の人が多いレストランよりも観光客が多いレストランで食事する
  • 遊泳場として知られていない湖や川には裸足で入らない

下痢が起きたときのために薬を用意する

前述のような予防法をとったとしても、旅行者下痢症にかかってしまうことはあります。そんなときのために、市販薬を持参しておくとよいでしょう。薬は海外でも手に入りますが、説明文が読めなかったり体に合うかわからなかったりというリスクがあります。また、売られている薬が偽物である可能性もあります。

市販の下痢止め薬の成分でよく知られているものを紹介します。蠕動運動を抑制する成分(ロートエキス、ロペラミド塩酸塩)は、病原体の排出を妨げる可能性があるため、発熱や血便が見られる下痢のときは使用が勧められていません。

  • 腸内の有害細菌を殺菌する:タンニン酸ベルベリン、アクリノール水和物
  • 腸の蠕動運動を抑制する:ロートエキス、ロペラミド塩酸塩
  • 腸の運動を正常化させる:木クレオソート
  • 腸の炎症をしずめる:次硝酸ビスマス、タンニン酸アルブミン
  • 腸内の有毒物を吸着する:カオリン、天然ケイ酸アルミニウム

市販薬を持っていくときは、パッケージに入れたままで何の薬かわかるようにしましょう。入国時に、内容物の確認が求められることがあるのでご注意ください。

下痢が続くときは、脱水を防ぐためにミネラル分を含む経口補水液で水分補給しましょう。すぐに手に入らないようであれば、下記の飲料水を飲んでください。飲みにくければレモンを加えてください。

手作り経口補水液

  • 水:1リットル
  • 食塩:小さじ1/2杯(約3グラム)
  • 砂糖:大さじ4と1/2杯(約40グラム)

旅行者下痢性はよく起きる病気と言っても、原因によっては早く医療処置を行わなければならない場合もあります。市販薬や水分補給などのセルフケアでは限界があるため、治る気配がないときや症状が重く我慢できないときは、迷わずに医療機関を受診しましょう。

参考文献

  1. [1]厚生労働省. "旅行者下痢症" 関西空港検疫所.
  2. http://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis09_05tra.html(参照2018-03-19)
  3. [2]日本消化器病学会. "旅行中の飲食に注意すべきこと" 日本消化器病学会.
  4. http://www.jsge.or.jp/citizens/travel(参照2018-03-19)

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